続き。。。

先にもう一つ下↓の記事から読むことをオススメします。

Ⅲ 『一体となった制作(イサン・ガワ)』-個人から共同体へ

モダニズム以降の芸術では個人こそが芸術創造の担い手であった。

しかし、フィリピンの5人組『サンガワ』の活動はこの個人のオリジナリティに真っ向から対立する。エルマー・ボルロンガン、フェデリーコ・シエベルト、マーク・フスティニアーニ、カレン・フロレス、ホイ・マニャーリの5人(男3人女2人)は1994年暮れにサンガワを結成し、翌年1月から活動を開始した。

サンガワ  パロ・セボ 1995

彼らは作品の構想を徹底的に論議、制作は完全に共同で進められ、単一の画家によるような様式的統一が認められる。しかし、それは全く没個性的でなく、『サンガワ』特有の溢れる個性が感じられる。

しかし、彼らは同時に個人としても独立の活動を行っていて、個と集団の自由な往還という、個人と芸術の関係の新たな境地を切り開こうとしている。

Ⅳ 布を贈る-贈与としての美術

ナウィン・ラワンチャイクン《パーカウマーの旅》

不特定多数の観客に布を配布。布は観客によって美術館の外へ運ばれる。この事により、布を媒介とした作家・美術館と観客の双方向の交流、循環するコミュニケーションの回路が達成される。

無償で配布するという事は贈与の精神である。

贈与によって、人は『もの』を交換しあっているのではなく、お互いの心に『贈与の霊』を揺り動かす。つまり、布を受け取った人の心にも、モノ以外の何かが動きだすのだ。そして、あらゆる芸術は本来的に贈与の精神を持っている。

Ⅴ 来るべき未来のために

東南アジアの美術家にとって問題なのは、個性の表出ではなく、自分たちの共同体のあり方である。それは西洋モダニズムとは明らかにかけ離れている。

彼らの作品は困難な社会状況を映し出しながら、決して希望の輝きを失うことはない。それは中に贈与の精神が隠されているからではなかろうか。

贈与には3つの義務がある。

1.贈る義務 2.受け取る義務 3.返礼する義務

私たちは彼らが贈ってくれたモノに対し、返礼しなければならない。返礼は何も難しいことではない。私たちが東南アジアの美術と美術家に共感し、理解しようと努めること。それが真の交流に繋がる。

学部4年 吉岡

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東南アジアから-来るべき未来のために

東南アジアから-来るべき未来のために 塩田純一(東京都現代美術館)

Art in Southeast Asia 1997  Glimpses into the Future

研究室に置いてあるカタログの最初の論文を読んだのでまとめておきます。

Ⅰ東南アジア現代美術へのアプローチ

この展覧会では、個々の作家の営みや作品を固有の文脈に即してよりきめ細かく見ていく構成にしているが、しかしそうした個々の差異の中にも、気候風土・人々のメンタリティ・基層となる歴史や文化には明らかにその土地の明白な共通点も存在することを忘れてはならない。

90年代の急激な経済成長、物質文明の享受が、生活の利便性をもたらす一方、さまざまな歪みや矛盾が一気に噴き出している。

また、民族文化・西欧文化・移民文化など多様な文化の混沌の中から、彼らは新たな文化的アイデンティティを探求している。

今回の展覧会では作品や作家を3つのグループに分類した。

1.文化の交差点から・・・他文化の中で、自らの民族固有の文化に参照しつつ時代の新たな表現を模索する。文化は可変的であり、相互の交流から新たなものが生まれてくる。

プレンダ・ファハルド タロット・カード・シリーズ:フィリピン人女性《移民労働者》1993

2.ゆれうごく『私』の領域・・・急速な近代化・外来文化の流入による個人のアイデンティティの危機。個人の問題は、民族の問題であったり、女性の問題であったり、人それぞれである。

イメルダ・カヒーペ=エンダーヤ  団結の絆 1985

3.社会の中で-発言する美術家たち・・・今日の東南アジア諸国が抱える社会的・政治的な問題を扱う。彼らは作品を『美術』のうちに留めることなく、社会に向かって開いていこうとしている。

ヌネルシオ・アルバラード ネグロスのメイド、世界へ行く 1994

Ⅲ 共同体に生きる

フィリピンのネグロス島北部の農村に暮らすヌネルシオ・アルバラードは、共同体に深く根を下ろした画家である。

Black Artist in Asia(BAA)のメンバーの一人で、ネグロス島のサトウキビ畑の労働者の過酷な生活・家族の困窮と、私腹を肥やし逸楽にふける資本家を描く。

彼は、作品を描く時、自分の個性の表象として描くのではなく、自身の共同体のために作品を描く。

彼は若者に絵を教え、農民達を指導して彩色版画やTシャツを造らせ彼らの生活の足しにするなど、芸術を通して共同体に貢献しようとしている。

学部4年 吉岡

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アジアの美術 福岡アジア美術館のコレクションとその活動

アジアの美術 

福岡アジア美術館のコレクションとその活動

この本はアジア美術館の成り立ちや、収集方針、主要な作品群などが載っています。

★福岡アジア美術館について★

成り立ち:アジア美術館は福岡市美術館の所蔵作品の中から近代以降(1980年代以降)、600点あまりの現代アジア美術の作品を選び出し、設立されました。

収集方針:アジア美術の独自性を示す優れた作品を、近現代を中心に収集する

所蔵作品の系統:①アジア美術の近代から現代に至る流れを系統的に示す作品

a:西洋美術の影響が見られるもの b:西洋に抗する為再生産された『伝統』

②アジアの近現代美術を考える上で重要な、民族芸術、民俗芸術や大衆芸術

近代化=西洋化の枠からはみでたもの

★フィリピンについて★

フィリピンはスペイン・アメリカによって長い支配を受けました。

他の地域は東インド会社という実利的な手段で支配されたのに対しフィリピンは宗教(キリスト教)による支配を受けたので、より深く精神的・文化的に西洋の影響が根強く残っています。

その為、そもそもフィリピンとは何なのか、フィリピン文化とは何か

という、外来の為政者によってではなく民衆の視点から歴史を書き直す運動が盛んであり重要なこととなっています。

★ピンタドとは?★

先生がこの間話に少し出したピンタドって何か知っていますか?

ロベルト・フェレオの作品によく出てくるキャラクターです。

このピンタドは、『描かれた人』という意味で、スペイン人の初期入植者が体中に刺青を施した先住民を見てこう呼んだという故事からきています。

よって、フェレオにとってこのピンタドは外来の影響を受ける以前の無垢なフィリピンを象徴する存在として使われています。

もしみんなご存知でしたらすいません!

あと、後ろの方にちょこちょこフィリピンに関するコラムが載っています。

学部4年吉岡

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